修学旅行には行かない事にした。
元々、誕生日にかかっていることもあってあまり行きたくなかったから丁度いい。


楽しみなんかじゃ…無かったんだから。



昨日、具合が悪いという事で家まで帰ってきたのだから、
多分誰も疑わないで居てくれるはずだ。


どちらにしても、ずっと泣いていたせいで頭が痛いのは嘘じゃない。



行きたくもなかった修学旅行に、行かないだけ。
丁度いいんだ。丁度。



ふぅ、と小さく溜息を吐く。


クラスメイトの奴らは、もう新幹線なりバスなりに乗っただろうか。
俺には何の関係もない事だが。


天井が遠い。部屋が広い。


俺しか居ないし、俺しか使わないのに、何て無意味な空間。



自分の部屋なのに、居場所が無いようにも思える。




今日は6月2日。
俺が大嫌いな誕生日は明日だ。


今日で14歳は終わり。本当に15歳になってしまう。
産まれてこなければよかった俺が、もう15年も生きていた。



真っ白なワンピースに、真っ白な帽子。
色が白くて、目が大きくて。
まるで生き写しのように、そっくりだった。


自分の顔を見ているかのような錯覚に陥るほど、似ていて。


だから、俺は自分の顔が大嫌いだった。
名前よりも嫌いだ。


俺自身、自分の事が大嫌いなのだから、
人に好かれないのはしごく当たり前な事なのかもしれない。


大嫌いだとは解っていても、悲しいくらいに俺は俺でしかなかった。
嫌い・嫌い・嫌い。


だけど、自分が自分自身を愛せない代わりに
誰かに愛して貰えたら…なんて甘いことをいつも考えていた。



大嫌いな自分が、自分以外のものにはならなくて。
見た目も、性格も何もかもが大嫌いだけど、
寂しいという感情が、拭いきれない。



俺は、俺であるばっかりに自分の事を愛することが出来ないけれど、
でも、俺は俺でしかなくて、どうしようもなく大嫌いなのに
誰かからは愛されたくて仕方が無いんだ。


ざまあ見ろ、俺。


なんて、他人を見るかのような目で俺自身を見る事が出来なかったから。




どうしたら、自分の事を好きになれるんだろう。
こんなにも嫌いなのに。


そんなことが出来る日がくるなら、今すぐそこまでタイムスリップしたいくらいだ。



15年前の明日だ。


何もかもの間違いが始まった日。最低最悪の日が、15年前の明日。



俺なんか、産まれてこなければよかったのに。
そうしたら何も苦しいことは無い。


あの人がそう言ったように
「俺なんか、産まれてこなければ良かったんだ。」