一人部屋にしては広すぎる部屋、そのせいでとても孤独を感じやすい事。
大きなベッドで一人で寝る…、なんていうのが「寂しい」なんて、
もうすぐ15歳にもなった今では、流石に無い。

昔は、寂しくて一人で泣いたりもしたけれど、今はそんな事はしない。
……しない筈、なんだけど。

今、目から零れ落ちるものはなんなんだろう。
暖かいと言うよりかは熱い。泣きすぎたせいか、喉も痛ければ頭も痛い。
鼻の頭なんかもっと痛い。


…どうして、自分がこんなに泣いているのかも忘れてしまうくらい泣いていた気がする。



いい加減身体も疲れてしまったのか、歩こうとするとふらふらする。
でも歩かなければ、ベッドまで辿りつけ無い。

ずっと床に座っていたから、足も手も痺れてしまっているし、泣きすぎたせいか寒い。
寒いのは身体なのか、それとも心なのか。
心が温まることは出来なくても、せめて身体だけは、包まれて暖かくなりたいと思った。

もう、悲しいことなんか忘れて、寝てしまおう。
寝てしまえば、また朝が来るのだから。

また、朝が着たら大丈夫。
きっと何も怖いものなんかないさ…。

その時にまた一人でも、怖くない。
お月様は怖いけど、お日様は優しいから。


ふらふらな足並みのままベッドへ潜り込むと、相当疲れていたのか、
直ぐに眠気は襲ってきた。


じんわりと布団に吸い込まれていくような…、段々と眠りについていく感覚。

こんなこと、別に初めてじゃないじゃないか。良くあったこと。普段と何も変わらない。

必要以上に傷つかなくても良いんだ。良いんだ…、と自分を励ます。


夢なのか現実なのか狭間なのかもわからない宙ぶらりんな状態で思考を巡らす。


もう直ぐ修学旅行。…その話し合いの時だった。

「…では、修学旅行の班決めをします。5、6人で班を作ってください。」

委員長の声に、クラスの何名かが適当な返事をして、
すぐにガヤガヤと様々な音が教室内に響く。

正直、修学旅行なんて行きたくない。
俺には友達もいなかったし、行きたい場所なわけでもない。
そんな状態で行く修学旅行が楽しいわけが無かった。

行事はいつもそうだから、今回もどうせ同じ。遠足の時も、
文化祭の時も、体育祭の時も、1つも楽しいなんて思えなかったんだから。

普通クラスで友達が一人も居ない、なんて状況があれば誰かしら気を使ってくれたりする。
先生に言われてでも、なんでも、誰かしらが何かしら対処をしようと思うもの。
…いじめられていたり、とかで無ければ、だが。

勿論、そんな風に気を使われたいわけでは無い。というか、
どちらかといえばそんなコトは絶対にされたくは無いのだが、
幸い俺はそんな事をされる対象でも無い。

だけど、友達は皆無だ。

……俺の周りには、友達のフリをした人たちしか居ないから。

「天笠くん、俺と班組もうよ。」
「俺も俺も!一緒にな!」
「あ、じゃあ私もお願いしますわ。」

いつものお決まりのメンバーの何人かが、自分の周りに人が集まってくる。
断るのも面倒だし、他に誘ってくれる人も居ないだろうから、
適当に相槌を打とうとした時だった。

「あ!!俺も一緒に混ぜて!!」

明るい声だった。そして、知らない顔。…いつものメンバーとは違う人。

それが、この間転校してきた、三枝弘人だった。

いつもの友達のフリをしているメンバーも
少し吃驚していたみたいだが、とにかく俺と班が組めれば
後のメンバーはどうでもいいらしく(元々メンバーの人達のみでも仲良しみたいだ)、
快く弘人くんを受け入れていた。そんな様子を見ている俺の事に気がついたのか、
目が合うとにっこりと笑って手を差し伸べられた。

「同じ班、よろしくな!」
「……う、うん。」

吃驚してしまって。こんなにも自然に笑顔を向けられたのが
久しぶりすぎて、戸惑ってしまって。

上手く返事が出来なかった。

だけども、そんな俺の様子なんか気にすることも無く、
弘人くんは無邪気な笑顔を浮かべると自分の席へと戻っていった。