俺の作った店。
CrossRose…眠らない町にあるホストクラブ。



夜に光輝く蛍のように。
貴方を照らして、一夜だけの夢を、精一杯楽しめますように。

朝には、光を失って地面に落ちるけど。
それでも、「幸せでした」と言って貰いたいから。



俺の作った店だから。
だから、No1は俺なんじゃないか、と思う。


じゃなかったら、そんな風になるわけもないじゃないか。



親父に作らせて、凌に経営を任せて。
俺はホストで。

本当は、自分から修行に出るべきだったんだ。
ホストのホの字もしらないまま、この店を作って
やってる事は他店と比べたらハチャメチャなんじゃないだろうか。

それでも、うまく経営してくれている凌には感謝するしかないし、
付いてきてくれる聖弥や、他のみんなにもすごく感謝してる。

客も、また一風変わった店だと認識してしまえば、
「CRだもんね」と言う風に納得してくれて、
うちは、うち、他所は他所のルールを良くわかってくれる人も多い。


それでも、中にはやっぱり、納得できない人も多いんだが…。

「私は客なのよ!」と怒鳴り散らす人。

だから、何だ、と言い返してやりたいが、さすがにそんな事は言わない。
客が大切だからじゃない、面倒な事に首を突っ込むだけ時間の無駄だからだ。


嫌なら帰ればいいと思う。次から来なければいいんだよ。
それだけの事なのに、理解できない人が、逆に理解できない。
仕方ないから、最後まで相手するけれど。


元々、あまり優しいほうでは無いと思う。
否、まったくもって優しいとはかけ離れているんだろうな。

誰にでも優しく出来るわけじゃない。
博愛主義者でも無い。

ただ、自分が大切だと思う人には、
自分を犠牲にしてでも、守りたいし優しくしたいと、そう思うだけの事。

それ以外の事は、意外とどうでも良く思っていたりする。
…あまり、そうは見られないみたいだけど。


思っていても、フォローとかに回るからだろうか。
行動と思いが伴っていない時もあるのも仕方ない、
そこまで人間も出来ていないのだから、自分に余裕が無いときは
思うが侭に進むだけの事。


「夜深、今日ちょっと早く上がっても平気?」
「ん、大丈夫だよ。今日は俺ちょっと頑張るし。」


ふ、と聖弥に声を掛けられる。
へへっと、笑って返せば、聖弥ファンの女の子が
「もう帰っちゃうのー。」「もっと居てよー。」
等と、寂しそうな声を上げた。

聖弥はそれを軽くあしらいながら、ありがとな、と告げて、店の奥へと消えていく。


左隣に座る女の子が、消えていく聖弥の姿を残念そうに見ている。

明菜ちゃんだったかな。
聖弥に本気で惚れてるんだよな、この子。

「…聖弥、帰っちゃったけど、俺は居るからさ。」

元気だして、と小さく耳打ちすれば、明菜ちゃんは少し頬を赤く染めながらこくりと頷いた。
小さく笑って、頭を撫でてやる。

すると、右隣の真央ちゃんがぎゅっと、俺の腕に抱きついてきた。

「夜深ー、明菜ばっか構わないでよぅ〜。」
相当酔っ払っているらしい。そのままぎゅーっと、抱きつかれ唇を奪われる。
まわりで、ずるいずるい!と他の女の子達のブーイングが聞こえるが、
まぁ、いいや…等と軽く音声をシャットアウト。

きゅっと抱きとめながら、答えるようにキス返し。
深い口付けの末、唇を離せば、とろんとした瞳で見つめられる。

素直に可愛いと思いながら、相手のおでこに軽いキスをすれば、
また、騒ぐ周りの女の子達。

小さく溜息つき、回り見渡しながら。

「…他にもしたい人が居るならどーぞ?順番は守ってよ。」
冷たい声とは裏腹に、表情には優しさを浮かべて。

結局、数十人とのキスを繰り返した。



途中、

「今日は夜深様、機嫌がいいのね。」


と言う誰かの声が聞こえてきた。


残念、正反対。


今日はとても、気分が悪くて落ち込んでるんだよ。