「夜深、着いたわよ。」
「ん…、ありがと。」

少し眠ってしまったのだろうか、気づいたら家の前に着いていた。
サユキさんの頬にキスしようと顔を近づければ、軽く胸を押された。

「無理しないでいいのよ。貴方の事情はわかってるつもり。」
「…なら、変なイタズラもやめてください。」

そういうとサユキさんはおかしそうに笑いながら、
それは別です、なんて言う。

普段は綺麗だな、と思うけどこういうところは可愛い人だ。

「それじゃあ、おやすみなさい?」
「おやすみ、あんまり無理しちゃダメよ。」

車のライトを2回。チカチカと光らせながらサユキさんは帰っていった。


「…ただいま。」

ぽつり、と言い、自分の部屋へと帰る。


特に、明かりのついた様子のない室内。
この時間じゃ、みんな寝ているのだろう。
どの部屋も暗い。

広い部屋、長い廊下。

また少し孤独を感じては、首を横に振りそれは気のせいなんだと言い聞かせる。

実際、実家とは違って一人なわけじゃない。

部屋をあければみんなが寝ているのだから。
部屋をあけても、空っぽな実家とは違うんだ。


部屋の鍵を開ける。
メールで聖弥の合鍵をもらえる予定になってた筈だが、
まだポストには入っていない。

「どこかで、まだ起きているのかな…?」

ちょっとした疑問。

だが、直ぐに帰ってきてから聞けばいいか、と思い
ソファに腰掛ける。


ダンボールが床に散乱してる。
さすがに一週間も経ったのだから、そろそろ綺麗にしたい。
だが、中々取り掛かれないのも事実。

一日一つ、なんて目標もすぐに忘れてこのザマだ。


はぁ、と小さく溜息が漏れた。